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覚え書:「【書く人】現代との格闘見つめ 『宮崎駿論 神々と子どもたちの物語』 批評家・介護労働者 杉田 俊介さん(39)」、『東京新聞』2014年05月25日(日)付。


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【書く人】

現代との格闘見つめ 『宮崎駿論 神々と子どもたちの物語』 批評家・介護労働者 杉田 俊介さん(39)

2014年5月25日


 子どものころからスタジオジブリの宮崎駿監督アニメを「血とし、肉としてきた」という「純粋ジブリ世代」の著者が、宮崎アニメの全体像を論じた一冊だ。
 「書こうと思った直接的なきっかけは、東日本大震災と原発公害事故の衝撃です。大地震や津波、放射性物質に汚染された大地などが繰り返し描かれてきた宮崎さんの世界が、現実と重なって見え始めた。今思えば、ひたすら現代と格闘している宮崎さんの苦しみ方が、ずっと気になっていたのだと思います」
 自身の子育ても関係している。四歳の長男は宮崎アニメの大ファン。この二年間ほど、「となりのトトロ」などを一緒に何十回も見た。「主人公に感情移入した少年時代と違い、大人の登場人物の目線も含めて作品を見るようになった。宮崎アニメにきちんと向き合いたいと思いました」
 本では宮崎さんの伝記的記述をはじめ、「風の谷のナウシカ」以降の各作品について論考を重ね、宮崎アニメに込められた思想とその軌跡を浮き彫りにした。
 例えば「トトロ」で描かれる美しい自然と、「ナウシカ」に出てくる有毒ガスに満ちた「腐海(ふかい)」。「この二つが宮崎さんの中では地続きになっている」と気付いたという。「自然は人間が共感できるようなものではない。汚染された大地も自然です。それを受け入れた上で、宮崎さんは人間に何ができるのかを考えた」
 破局に向かう世界を描きながらも、宮崎さんは絶望しない。そこでは「子ども」が大きな意味を持つ。「子どもたちから大人が学ぶという基本感覚がある。自然の中を走り回る子どもという存在に立ち返る。そこから考えれば間違いないというメッセージがある」
 文学や労働問題の批評を書く傍ら、十年以上前から障害者のヘルパーとして働いてきた。「自分自身の生き方」と重ねて作品を論じた。「ナウシカは人間がほかの生き物よりも優れているとは考えない。私も介護の仕事を始めて、弱者を支援するつもりが、逆に自分が助けられていることが分かりました」
 宮崎さんは引退を表明したが「ぜひまた大作を」と願う。「『風立ちぬ』がゴールだとは思えない。創作意欲が消えたわけではないと思うので、すべてを注ぎ込んだ巨大な作品をつくってほしいですね」
 NHKブックス・一六二〇円。 (石井敬)
    --「【書く人】現代との格闘見つめ 『宮崎駿論 神々と子どもたちの物語』 批評家・介護労働者 杉田 俊介さん(39)」、『東京新聞』2014年05月25日(日)付。

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[http://www.tokyo-np.co.jp/article/book/kakuhito/list/CK2014052502000171.html:title]

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宮崎駿論―神々と子どもたちの物語 (NHKブックス No.1215)
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