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書評:尾佐竹猛『大津事件 ロシア皇太子大津遭難』岩波文庫、2014年。


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尾佐竹猛『大津事件 ロシア皇太子大津遭難』岩波文庫、読了。明治24年、来遊中のロシア皇太子が警備の巡査津田三蔵に襲撃された大津事件。皇族扱いの審理をせよと強要から司法権の独立を守る歴史的事件へと展開するが、本書はその全貌を豊富な資料を駆使し、明治国家の権力構造を鮮やかに描く一冊。

児島をはじめ大審院はいかにして「司法権の独立」を守り得たのか。自ら大審院判事である著者はその非藩閥的性格に由来すると指摘。死刑を主張した伊藤博文を「この人が在朝第一の聡明なる政治家であったとは、日本の国情も情なきものであった」と手厳しい。

本書は、津田三蔵、逮捕に協力した車夫、謝罪のため自害した房州の烈女畑山勇子の生涯を著したエッセイを「余篇」として付記。国家の権臣だけでなく、事件に翻弄された臣民にも光を当てている。関東大震災の翌年からの連載だが、当時の拝外主義への抵抗の意義も認められる。

校注・解説は三谷太一郎先生。「宮沢が大津事件を通して提起したような問題は、たとえば国家利益と法的正義との関係の問題としてなお今日の問題である。…『大津事件』は国家のレベルだけでなく、社会のさまざまなレベルで、さまざまの形で今日もなお生じている」。

敗戦後、現行憲法成立後、大津事件は護憲の立場から幾度も参照され、1951年には岩波新書に収録された。たとえば、憲法に反する事柄を閣議決定でなしえようとする現在、「護憲の神」の軌跡を負う本書を学ぶ意義は、いやまして大きい。 

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