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書評:N・アジミ、M・ワッセルマン(小泉直子訳)『ベアテ・シロタと日本国憲法 父と娘の物語』岩波ブックレット、2014年。


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N・アジミ、M・ワッセルマン(小泉直子訳)『ベアテ・シロタと日本国憲法 父と娘の物語』岩波ブックレット、読了。日本国憲法に男女平等の原理を書き込んだベアテの父は日本に西洋音楽を伝えた世界的なピアニスト。知られざる父レオの生涯へ光を当てることで、父娘の理想主義と人間への信頼の人生を生き生きと描く。

第I部で、日本の音楽家を育てた父、男女平等を憲法に盛り込む娘の姿を描き、アメリカへの帰国後のベアテの軌跡(アジア文化の紹介者)を紹介。II部ではベアテへのインタビュー、ベアテの娘ニコルの追悼スピーチを掲載。図版多数。

「ベアテは何度も私に『平和への道は互いに理解しあうこと』と言っていました。文化が違いを乗り越える橋となること、そして芸術が持つ変革の力、つまり芸術には理解を育み深め、より高潔な資質を伸ばす力があることを彼女はよくわかっていました。その意味で彼女は父の娘であり、私や何百万人もの女性の手本です」とアジミ。

戦時下、ベアテの良心は東京から軽井沢に強制疎開。憲兵の監視下におかれた。「彼は日本のピアノ教育の礎をつくるために全力を注いできた。国際的なキャリアを棒にふり、寒さと飢えと恐怖にさらされ」た仕打ちで日本は応えた。

GHQの一員として戦後日本の再建に携わるベアテ。新憲法が日本のものかどうか議論が続くが、「日本側のインプットも無視できない」。制定過程における喧々囂々の交渉・討議、そして日本リベラルの水脈は単純否定できない。

「憲法の条文は必ずしも『アメリカの条文』というわけではなく、一九世紀や二十世紀のさまざまな憲法から、多くの示唆と影響を受けている」。悲惨な体験を経験した日本の人々が渇望したのは根幹たる基本的人権と民主主義の原則。

70頁足らずの小著ですが、憲法の実質的改悪、そして女性の人権が毀損されても屁とも思わない人々が次から次へとわき出す現代。手に取りたい一冊です。 

 

[https://www.iwanami.co.jp/moreinfo/2708890/top.html:title]


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