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書評:本田由紀『社会を結びなおす 教育・仕事・家族の連携へ』岩波ブックレット、2014年。


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本田由紀『社会を結びなおす 教育・仕事・家族の連携へ』岩波ブックレット、読了。行き詰まり混迷を深める現代日本。その淵源をどう理解すればよいのか。本書は戦後日本に誕生した社会システムを教育・仕事・家族が一方向にリンクした「戦後日本型循環モデル」と捉え、その誕生と普及、破綻を概観する。

高度経済成長期~安定成長期の日本を縛り続ける「戦後日本型循環モデル」は偶然といってよい諸要件から誕生する。その特徴は「仕事・家族・教育という三つの異なる社会領域の間が、①きわめて太く堅牢で、②一方向的な矢印によって結合されていた」という点である。

仕事・家族・教育という三領域を繋ぐ矢印はヒト・カネ・ヨクがよじり合って成立し、ある領域から次の領域には、教育機関が学生を社会人として会社へ引き渡すがごとく、人間が送り込まれるていく。そこでの人間は性別年齢に応じた役割分業が励行されることでシステムが拡大再生産され、その組織は強い凝縮性と同調同圧の特色を備えていく。

経済の安定成長を背景に戦後日本型循環モデルは、理想的教育・仕事・家族という日本型成功物語を語るが、三領域を繋ぐ矢印の自己目的化の進行は三つの社会領域の本質的な存在理由を空洞化してしまう。何のために働くのか、学ぶのか、愛するのかが後に置かれる。

いい学校に入り、いい企業に入り、お金を稼いで家庭をもつ--こうした社会モデルは、バブル崩壊後、それを支える環境要因が失われることで「底が抜けてゆく」。これまで三領域間に成立した矢印が、ある領域からン別の領域へ資源を注ぐことができなくなってしまった。

「かつての戦後日本型循環モデルは、もう維持することは不可能ですし、それが内包していた諸問題を思えば、維持しようとすることは望ましくもありません」。これが現状。規制が機能しない所に規制緩和をもとめる如き事態をもっと悪化させるだけ対応改革ばかりである。

戦後日本型循環モデルは矢印が一方向的故にその矢印が肥大化し、循環の自己目的化で破綻した。ならば「その矢印を一方向ではなく双方向的なものに持っていく必要があるのではないか」。各領域間で相互に支え合うとともにお互いを尊重しつつ連携することを目指すべきであろう。

具体的に著者は、1)財源の問題に関しては、資源の再分配による不平等の軽減、2)今なお多大な財力や権力を握る地位にある団塊世代が関心を持つこと、3)性別役割分業規範のような従来モデルの元で生成された価値観や規範を更新すること、が必要ではないか。

個人の行動や責任ではどうにもならない構造的破綻を前に「働かざるもの食うべからず」とか「苦しいのは自業自得」といってもはじまらない。「このままではだめだ」だが、循環モデルの呪縛に囚われず脱却や変革を志向する若き人々と連携するほかない。


 


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