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覚え書:「書評:インフラの呪縛 山岡 淳一郎 著」、『東京新聞』2014年06月01日(日)付。


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インフラの呪縛 山岡 淳一郎 著

2014年6月1日

◆「命守る」出発点からの距離
[評者]松原隆一郎=東京大教授
 東北の復興に国土強靱(きょうじん)化、二○二○年東京五輪・パラリンピックと、公共事業が目白押(めじろお)しだ。民主党への政権交代時にキャッチフレーズとなった「コンクリートから人へ」の流れはすっかり逆転、いまや東北地方を中心に建設業者は人手不足の悲鳴を上げている。
 しかし公共事業叩(たた)きにも、一理はあったはずではないか。コンクリートへの「まともな投資」は、政治とカネ、財政負担、環境問題といった批判を乗り越えなければならない。それなのに七月に取り壊しが始まる国立競技場の建て替えでは、将来の利用にかかる市場調査もせず、官僚と利害関係者が密室で税金の使い道を決めてしまった。
 公共事業は今後、どうなるのだろう。それを考えるためにも、まずは歴史に学ぶ必要がある。本書は明治以降のインフラ整備の歴史を鉄道敷設からひもとき、ダムや高速道路の建設、夢の新幹線と旧国鉄の解体、そして公共事業批判を経て大震災からの復興や老朽化した橋の修復へとたどる。各界の生き字引へのインタビューや膨大な資料を踏まえ、利権への好悪だけでない、多方向からの視点を与えている。
 著者に従い、日本で無数のダムや本四架橋が建設された経緯を思い起こすと、出発点には「生命を守ること」への希求があった。戦後の十五年間、巨大地震や激甚台風、船(洞爺丸)の沈没といった死者千人レベルの事故が相次いでいる。治水が悲願とされたのだが、さらに世界に比類ないことに、高度成長の果てに地域間格差が縮んだことがある。日本海側の日本を開発したことは、田中角栄の功績であろう。
 興味深いことに、ローカル線が鉄道の財政破綻の原因というのは思い込みにすぎないらしい。むしろ東京駅のような都心の地下工事がよほど負担が大きく、運賃を上げなかった罪は大きいという。自律分散型の都市と自然生態系との調和を実現するインフラが成熟国には必要と、冷静かつ情熱的に語っている。
(ちくま新書・950円)
 やまおか・じゅんいちろう ノンフィクション作家。著書『原発と権力』など。
◆もう1冊 
 根本祐二著『朽ちるインフラ』(日本経済新聞出版社)。半世紀前の高度成長期に造られた日本のインフラ補修の課題を提言する。 
    --「書評:インフラの呪縛 山岡 淳一郎 著」、『東京新聞』2014年06月01日(日)付。

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[http://www.tokyo-np.co.jp/article/book/shohyo/list/CK2014060102000183.html:title]

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