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覚え書:「書評:日記で読む文豪の部屋 柏木 博 著」、『東京新聞』2014年06月01日(日)付。


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日記で読む文豪の部屋 柏木 博 著

2014年6月1日


◆作家の心と体を映す
[評者]小倉孝誠=慶応大教授
 多くの人にとって、いちばん落ち着ける場所は自分の部屋だろう。人間活動のかなりの部分は室内で行われるから、自分の部屋がないと不便だ。室内が仕事場の作家となれば、部屋への愛着は誰にもまして強いだろう。本書は、日本の作家の日記を読みながら、作家と住居の関わりを考察した洒脱(しゃだつ)なエッセーである。
 人気作家だった漱石は、意外にもずっと借家暮らしだったが、書斎には花を活(い)け、書画骨董(こっとう)を置き、縁側から庭の草木を愛(め)でていた。自分の趣味に合わせ、精神のあり方と調和するような室内空間を楽しんだ。他方、一人暮らしが長かった荷風には、住居への執着が見られない。東京を飽くことなしに散策する遊歩者だった荷風にとって、都市の施設と機能が住居の一部だったのであろう。哀愁をそそるのは啄木の場合だ。貧困と病に苦しんだ彼は転居を繰り返し、漱石や荷風と違って安住できる部屋を持てなかった。「広き階段とバルコンと明るき書斎」がほしいという願いが、読者の胸を打つ。彼の珠玉の短歌と評論は、劣悪な条件のなかで執筆された。天才は逆境に屈しないのだ。さらに内田百〓、宮沢賢治…。
 部屋には、住む人の痕跡が残される。作家の書斎とは単なる仕事場ではない。そこには作家の精神と身体のあり方が映し出されている。日記の新しい読み方を示してくれる本である。
※〓は門構えに月
(白水社・2376円)
 かしわぎ・ひろし 1946年生まれ。武蔵野美術大教授。著書『探偵小説の室内』。
◆もう1冊 
 コロナ・ブックス編集部編『作家の住まい』(平凡社)。川端康成・北杜夫ら十二人の作家の書斎や住居を写真と文で。
    --「書評:日記で読む文豪の部屋 柏木 博 著」、『東京新聞』2014年06月01日(日)付。

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[http://www.tokyo-np.co.jp/article/book/shohyo/list/CK2014060102000181.html:title]

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日記で読む文豪の部屋
柏木 博
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