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覚え書:「書評:万葉びとの宴 上野 誠 著」、『東京新聞』2014年06月15日(日)付。


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万葉びとの宴 上野 誠 著

2014年6月15日


◆酒と歌が縮める距離
[評者]岸本葉子=エッセイスト
 私たちの遠い祖先の宴会を、万葉集の研究者が再現し考察する。なにゆえ万葉集なのか。収録されている歌のほとんどが、宴(うたげ)で披露されたものだから。「憶良らは 今は罷(まか)らむ 子泣くらむ それその母も 我(あ)を待つらむそ」。家族愛の表出と学校で習った一首も、宴を早引けするための巧みな言い訳だったとは。
 宮廷人の雅(みやび)な遊びを想像したが、実情はそうでもなさそう。ホストにとり入る戦術あり、ゲストどうしの知のバトルあり。お題を受けて一首詠むには、当時の教養、漢詩文をふまえねばならず、順番が後の方だと変化球も必要だ。外して無礼になったならば、下手するとクビが危ない。学問だけではだめ。場を読む力とコミュニケーション技術が求められる。
 著者の巧みな文章で、いにしえびとが生き生きと本の中を立ち回る。現代の私たちにも通じるエピソードや、耳の痛い金言が満載だ。芸を求められたらためらうな、自慢話と長話は禁物。接待を終えた後仲間どうしのお疲れさん会もあったなんて、彼らが身近に感じられてくる。
 宴は日本文化の原点だ。茶道も華道ももとは客をもてなす工夫。政治の原点でもある。酒食を共にし相歌い和せば、互いの距離は確実に縮まる。芸術と政治は本来別ものではないと著者。
 ネット社会で対面状況が不得手になっている今、万葉びとに学ぶことは多い。
 (講談社現代新書・864円)
 うえの・まこと 1960年生まれ。奈良大教授。著書『魂の古代学』など。
◆もう1冊
 上野誠著『万葉びとの奈良』(新潮選書)。国際都市・平城京の人々の暮らしと文化を万葉集などをもとに蘇(よみがえ)らせる。
    --「書評:万葉びとの宴 上野 誠 著」、『東京新聞』2014年06月15日(日)付。

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