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覚え書:「書評:神と仏の再発見 長部 日出雄 著」、『東京新聞』2014年06月15日(日)付。


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神と仏の再発見 長部 日出雄 著

2014年6月15日


◆日本人の基盤に畏れる心
[評者]佐藤洋二郎=作家
 日本は不思議な国だ。蕃神(ばんしん)である仏様を敬い、なおかつ八百万(やおよろず)の神様も崇拝する。先進国でこんなに神仏を崇(あが)める民族はいるのだろうか。その上、結婚式も神前や仏前、キリスト教徒でもないのに教会で挙げたりする。憲法で信教の自由をうたっているが、それよりももっと自由に振る舞っているように見える。
 ここに書かれていることは、遠い昔より神仏に畏敬の念を抱く日本人の心を改めて提示したものだが、読んでいて、日本人の精神構造は神仏を敬うことによって、育まれていたのだなと実感させられる。そしてもし神社に文字が残っていれば、また別の歴史も見えてくるのだろうが、残念ながら神仏分離により、逆に時代の向こう側に隠されたのも事実だ。
 著者はそこのところも丹念に書いていて、北は岩木山神社から南は霧島神宮古宮址(ふるみやあと)まで、十九の寺社を訪ね歩き日本の成り立ちを探っている。おのずとわたしたちの生活や生き方も、古代からの神仏の崇敬や畏敬が無言の律法となって、日本人の精神構造を作り上げたということにも気づかされる。ものの見方も考え方も、あるいは美意識も佇(たたず)まいも、その基盤になっているのは神仏への畏れや戒めからだ。
 本書を読むと、日本人がいかに豊饒(ほうじょう)な精神の持ち主かということも見えてくる。戦争に負け、時代が変わったとしても、神仏の威徳によりその精神は簡単に消え去るものでもない。心の奥深くに水脈があるのだ。著者はそれを掘り起こし、世の中をもっと浄化させたいと願っている。わたしたちを救うのは今も昔も「カミノミクス」だと言うが、眠っている信仰心を呼び戻せば困難な時代にも新たな可能性を見いだすことができる。
 著者の主張は、古さから新しさを学ぶのだとおもっているこちらには、まったく同感だという気持ちにさせられる。各章はながくないが、文章に奥行きがあり、読み応えがあった。
  (津軽書房・2160円)
 おさべ・ひでお 1934年生まれ。作家。著書『桜桃とキリスト』など。
◆もう1冊
 安丸良夫著『神々の明治維新』(岩波新書)。明治維新時の「神仏分離」と「廃仏毀釈(はいぶつきしゃく)」が日本人の精神をどう変えたかを克明に描く。
    --「書評:神と仏の再発見 長部 日出雄 著」、『東京新聞』2014年06月15日(日)付。

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[http://www.tokyo-np.co.jp/article/book/shohyo/list/CK2014061502000185.html:title]

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