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書評:「読書 人間にとって善とは何か=フィリッパ・フット著 筑摩書房」、『聖教新聞』2014年06月28日(土)付。


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読書
人間にとって善とは何か
フィリッパ・フット著 高橋久一郎 監訳
河田健太郎・立花幸司・壁谷彰慶訳

全人性の理解促す思索が光る

 学問のあり方が見直された20世紀、最も批判を受けたのは哲学だ。諸学の王の特権性は反省されるべきだが、根源的な探究態度を萎縮させた知的遊戯のごとき先鋭的批判は、本末転倒だろう。倫理学も例外ではない。エッジの効いたメタ倫理学、効用性で全てを測る功利主義は新風を吹き込んだが、人間の全人性を理解することに成功したとは言い難い。
 だとすれば、善悪の問題には、真っ先に「人間とは何か」を探究する必要がある。思索を等身大の人間の事象に回復する本書は、格好の一冊だ。
 著者は、人間が「生き物」である事実から出発する。人間はミツバチやビーバーと同じ動物として共通するが、理性をもち、考えることで異なる。一方を強調する議論は多いが、全体としての人間とは「行為の理由を認識することができ、その認識能力に基づいて行為する能力を備えた生き物」だ。その生き物にとって善とは超越世界から規定する先験的な根拠ではなく、既知の事柄から導かれる分析知とも無縁だろう。
 実践に注目する著者は「善とは、人間が自然本性にかなった生き方をすること」と。本書は倫理学の重要な議論を逐次検証するが、規範を自然の中に求める点でアリストテレスの中庸のよき継承であり、理性に人間らしさを認める点でよきカント主義が交差する。
 著者は、貧困の中に生きる人々をサポートするOxfam創設時からのメンバーという。実践が思索を裏付けている。(氏)
筑摩書房・2916円
    --「読書 人間にとって善とは何か=フィリッパ・フット著 筑摩書房」、『聖教新聞』2014年06月28日(土)付。

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