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覚え書:「くらしの明日 私の社会保障論 続く『希望格差社会』=山田昌弘」、『毎日新聞』2014年07月02日(水)付。


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くらしの明日
私の社会保障論
続く「希望格差社会」
若者の意識調査 7カ国中最低
山田昌弘 中央大教授

 2014年度版「子ども・若者白書」が公表された。特集で紹介されたのが、若者の意識調査の国際比較の結果である。日本で将来に希望を持つ若者は61・6%で、調査対象7カ国の中で最低。40歳になった時に自分が幸せになっていると思う人の割合も、66・2%で最低だった。
 私が著書「希望格差社会」(ちくま文庫)の中で「今、希望を持てる若者と持てない若者に二極化している」と書いたのが、ちょうど10年前のことだ。その中で、ある米国の社会心理学者の「希望」が生まれる条件「努力が報われると思えば希望が生じ、努力が無駄になると感じれば絶望が生じる」を引用し、「日本では『努力しても報われない』状況に置かれている若者が増えている」と論じた。
 その代表的存在が「非正規雇用の若者」である。学校卒業時点で正社員になれなかったり、一度辞めてしまったりすると、努力してもなかなか安定した正社員になれない。多少時給は上がっても、必要なくなれば解雇されてしまう。彼等は夢を見ることはできても、日々の仕事に希望を持つことは難しい。
 希望に限らず、「感情」にはその人が置かれた環境が影響する。日本で若者の非正規雇用比率が4割程度であることを考えると、将来に希望を持てない若者の割合はこの数字と重なる。
 調査で取り上げられた欧米諸国や韓国は、日本以上に若者の雇用状況は良くない。新卒採用はまれで、若者失業率が日本以上に高い。収入が低く不安定な職に就く若者も多い。それでも彼らは希望を持っている。なぜなら、「今不安定でも、努力すれば安定した職に就くチャンスがある」「失敗してもやり直しがきく」と思えるからである。これらの国では、失業中でも、不本意な仕事に就いていても、将来、いくらでも就職や転職のチャンスがあるからだ。
 しかし、日本では人生の早い時期での格差が一生続く。安定した優良企業の正社員、公務員になれた若者は、人並みに努力すれば認められ、昇進し、定年まで安定した生活を送る見通しが持てる。一方、学卒後に正社員就職できなかった者、辞めた者は希望を持ちにくい。アルバイトや派遣、期間工などの非正規雇用者は、その仕事で人並みに努力しても報われる見通しは少ない。報われる仕事に就くためには、正社員以上の能力を付け超人的な努力が必要なのだ。
 日本が他の先進国と比べて希望が持てない若者が多いのは、「新卒一括採用の慣行」と「正社員と非正社員の間の大きなギャップ」があり、若い時の格差が固定化してしまうからだ。結局、この10年間、若者が置かれた「希望格差」という状況は全く変わっていない。
厳しい若者の雇用状況 「子ども・若者白書」は、特集で日本を含む7カ国の満13~129歳の若者の意識調査を実施。日本の若者の「職場満足度」は46%で調査国で最低。収入や老後の年金など、働くことに関する全項目で「不安」の回答割合が他国より高かった。厳しい若者の雇用状況が改めて示された。
    --「くらしの明日 私の社会保障論 続く『希望格差社会』=山田昌弘」、『毎日新聞』2014年07月02日(水)付。

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[http://www8.cao.go.jp/youth/whitepaper/h26honpen/index.html:title]


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