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覚え書:「平和国家の変質:集団的自衛権・閣議決定/4 後方任務も戦闘常態化」、『毎日新聞』2014年07月05日(土)付。

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平和国家の変質:集団的自衛権・閣議決定/4 後方任務も戦闘常態化
毎日新聞 2014年07月05日 東京朝刊

(写真キャプション)負傷したドイツ軍兵士を病院に運ぶドイツ、米国の兵士ら=アフガニスタン北部・クンドゥース州で2011年2月18日、AP

 ◇独兵、アフガンで55人死亡

 「アフガニスタンの女性を手助けすることができて、とても満足している」。安倍政権が集団的自衛権の行使容認を閣議決定してから2日後、イタリア国防省の報告会で、陸軍の女性大尉、フランチェスカ・ジャルドゥッリさん(31)は自らの海外任務経験を誇らしげに語った。旧ユーゴスラビアのコソボで麻薬や武器の密輸取り締まりに従事した後、2010年9月から半年間、アフガン西部ヘラートで地元女性に職業訓練などを施した。イタリア軍で海外派兵組はエリートの証しでもある。

 独裁者ムソリーニの下、ナチス・ドイツとともに第二次大戦に突き進んだイタリアは日本と同様、憲法で「戦争放棄」をうたう一方、北大西洋条約機構(NATO)加盟国として集団的自衛権を持つ。憲法11条は「他国民の自由への攻撃、国際紛争解決の手段としての戦争は拒否する」と記すが、国際機関を通じた「国家間の平和と正義の保障」のための武力行使は例外だ。数多くの国連平和維持活動(PKO)に参加する「PKO大国」でもある。

 しかし、海外派兵による「国際貢献」では血も流れる。現在、中東やアジア、アフリカなど25カ国・地域に計5070人の将兵を派遣するイタリアだが、アフガンではこれまでに53人の兵士を失っている。

 「仲間の頭が吹き飛ばされたのを見て以降、ショックで眠れない」。03年6月、アフガンの首都カブールで自爆攻撃に遭遇したドイツ軍の元兵士は、退役軍人の支援組織が紹介する手記でこう振り返る。爆発は戦場から離れた空港付近で、他国部隊の輸送任務中に起きた。爆弾を積んだ自動車が兵士を乗せたバスに突っ込んだのだ。この事件で不眠症に陥った元兵士は、任務を遂行できずに帰国した。手記は戦闘地域以外での「日常的な死」を明らかにしている。

 01年の米同時多発テロを受け、NATOは集団的自衛権を発動。米主導のアフガン攻撃に加わった。ドイツ国内では戦闘参加への反対論が強く、シュレーダー政権は復興支援を名目に後方支援部隊の派遣を決定した。だが、比較的安全なはずの後方任務でさえ、実際に戦闘に巻き込まれるケースが常態化している。

 ドイツ連邦軍によると、01-13年にアフガンで死亡したドイツ兵は55人。うち35人は銃撃など外部からの攻撃で命を落とした。独国際政治安全保障研究所のマルクス・カイム博士は「戦闘地域と後方支援地域を区別することは不可能」と指摘した。6月の世論調査では、7割が外国への派兵に反対している。

 ドイツ基本法(憲法)は軍の役割を「防衛」に、活動範囲を事実上NATO域内にそれぞれ限定してきた。転機は1991年の湾岸戦争だった。資金援助だけで多国籍軍に参加せず、日本同様に「カネを出しただけ」と批判され、積極路線に。92年にカンボジアへ医療部隊を派遣して以来、旧ユーゴやソマリアなど域外への派兵を活発化させた。

 域外派兵は94年、憲法裁判所の判断で正当化された。専守防衛を拡大解釈し、国連やNATOなどが実施する活動で、連邦議会から承認を得ることが条件だ。

 「日本を取り巻く状況を考えれば、安全保障の強化は当然」。コソボなどで従軍経験のあるドイツ軍元兵士は、安倍政権の集団的自衛権容認を肯定した上で、「コソボは戦闘地域とそれ以外が比較的分かりやすい場所だったが、国によって状況は違う。現場の情報収集能力と的確な判断能力がなければ、派兵は非常に危険だ」とも警告する。

 ベトナム戦争に米軍に次ぐ32万人の兵員を派遣した韓国は、見返りとして米国から巨額の援助を得て経済発展の基礎を築いたが、同時に戦死者5000人余りの犠牲も払った。その後、海外派兵しても戦闘には加わらない方針を徹底。湾岸戦争以降24地域に派兵したが、戦闘には一回も参加していない。

 陸軍士官学校出身で、同期生4人がベトナムで戦死した許南〓(ホナムソン)国防大名誉教授(67)は「国が豊かになり、民主化されたことで、外国の戦争で血を流すことへの世論の反対が強くなった」と説明する。2003年のイラク戦争でも米国から参戦要請を受け、軍は前向きだったものの、就任直後だった盧武鉉(ノムヒョン)大統領の反対で実現しなかったという。

 盧大統領はその後、米韓同盟の重要性を理由にイラク派兵を決断するが、派遣したのは建設などの後方支援部隊だった。許名誉教授は「血を流した方が大きな代価を得られるのは歴史の常だが、今後も戦闘部隊の派兵は難しいだろう」と話している。=つづく 
    --「平和国家の変質:集団的自衛権・閣議決定/4 後方任務も戦闘常態化」、『毎日新聞』2014年07月05日(土)付。

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