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覚え書:「くらしの明日 私の社会保障論 格差広がり支援届かず 深まる女性の貧困=山田昌弘」、『毎日新聞』2014年07月30日(水)付。


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くらしの明日
私の社会保障論
格差広がり支援届かず
深まる女性の貧困
山田昌弘 中央大教授

 成長戦略の目玉に、女性の経済分野での活躍が政策課題となっている。日本の女性管理職比率は、世界最低レベル。日本経済の活性化のために指導的地位にある女性を増やす、これはこれでよいことである。
 しかし、その裏側で起きていることにも目を向けなければならない。男女雇用機会均等法成立から30年近くたち、確かにキャリアで活躍する女性もでてきた。しかし、一方で、貧困状態に陥る女性も確実に増えている。
 先月、日本学術会議社会変動と若者問題分科会と労働政策研究・研修機構の主催で、貧困化する若者女性をどう支援するかというシンポジウムが開かれた。そこでは、若者女性の貧困が見えにくくなっているため、支援の手が届きにくくなっている現状が報告された。
 「女性の貧困」と言っても、ピンとこない人が多いかもしれない。確かに路上生活者はほとんどが男性で、女性は3・5%(2014年厚生労働省調査)だ。しかし、ホームレスの定義を広げると、深刻な実態が浮かび上がる。女性ホームレスを調査研究する丸山里美・立命館大準教授によると、日本では、女性は隠れたホームレスになりやすいという。野宿よりましだからと知人宅を転々とする、暴力におびえながらDV男性と同居し続ける、不本意でもアパートを提供してくれる接客業で働くなど、自分が安心して寝起きできる「ホーム」がない若い女性が増えているという。
 今まで若い女性の貧困が目立たなかったのは、1990年代半ばまでは、定職に就く夫や余裕のある親のサポートを受けられていたからである。働く未婚女性の大部分は、一般職でも保証がある「正社員」だった。たとえ結婚せず、親のサポートも受けなくても、貧困に陥らない程度の収入は得られていた。
 しかし、90年代半ばからの経済状況の変化は、若者女性に特に過酷だった。正社員職が激減し、不安定な派遣やアルバイトに置き換えられた。これでは自立した生活ができない。そして、結婚して夫に頼ろうとも、十分な収入を得ている未婚男性の数も同時に減っている。そして、最後の支え手だった実家の親の経済状況も悪化している。
 自立できる収入が得られる仕事にも就けず、親からのサポートも受けられず、安定した収入の男性と結婚の機会もない若者女性が増えている。つまり、若い女性の間で格差が生まれ、その結果、ホームがない生活を強いられる女性が出てきているのだ。とりあえず生活ができているからといって、支援も後回しになりがちである。女性政策と言った時、そのような人たちが希望を持って生活できるような施策も併せて実施する必要がある。

女性の貧困 貧困率を男女で年齢層別に推計すると、ほぼ全ての年齢層で男性よりの女性の貧困率が高く、差は高齢期になるほど拡大する。育児・介護などで就業を中断しやすく、結果、年金水準が低くなるなど、弱い経済基盤を産む社会的構造が問題だ。
    --「くらしの明日 私の社会保障論 格差広がり支援届かず 深まる女性の貧困=山田昌弘」、『毎日新聞』2014年07月30日(水)付。

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