« 吉野作造研究:抵抗としてのアジア主義:吉野作造の場合 | トップページ | 書評:ベネディクト・アンダーソン(加藤剛訳)『ヤシガラ椀の外へ』NTT出版、2009年。 »

覚え書:「防衛省:有事の隊員輸送、民間船員も戦地に 予備自衛官として、検討 フェリー2隻借り上げ」、『毎日新聞』2014年08月03日(日)付。


1_2

-----

防衛省:有事の隊員輸送、民間船員も戦地に 予備自衛官として、検討 フェリー2隻借り上げ
毎日新聞 2014年08月03日 東京朝刊

 尖閣諸島を含む南西諸島の有事の際、自衛隊員を戦闘地域まで運ぶために民間フェリーの船員を予備自衛官とし、現地まで運航させる方向で防衛省が検討を始めた。すでに先月、2社から高速のフェリー2隻を借りる契約を結んだ。太平洋戦争では軍に徴用された民間船約2500隻が沈められ、6万人以上の船員が犠牲となった歴史があり、議論を呼びそうだ。

 同省が隊員輸送に活用するのは、津軽海峡フェリー(北海道函館市)の「ナッチャンWorld」号と新日本海フェリー(大阪市)の「はくおう」号で、ともに1万トンを超える。同省は2隻を今年度末まで7億円で借り上げたが、来年度以降は両社や金融機関などの出資で設ける特別目的会社(SPC)が船を所有し、平時は民間、有事には防衛省が使う仕組みを目指す。

 乗組員については、有事や平時の演習など年間数十日の運用で現役自衛官を専従させられないとの判断から、自衛官OBの予備自衛官や、あらかじめ予備自衛官に仕立てた民間船員を充てることを検討している。

 背景には海自出身の予備自衛官不足がある。2012年度の予備自衛官約3万2000人の大半は陸自出身者で、海自出身者は682人。現役海自隊員で艦船に乗り組むのは3分の1程度で、船に乗れる予備自衛官は限られるとみられる。招集時には一刻も早く港へ行く必要もあり、居住地などを考えると条件を満たす者はさらに少なくなる。

 しかも、海自出身の予備自衛官は新任を退任が上回り、毎年約50人ずつ減少。自衛隊の艦船と民間のフェリーでは操船技術が大きく異なることもあり、2隻の運航に必要な乗組員約80人を自衛隊OBでまかなうのは難しいとみられる。

 同省防衛政策課は、「予備自衛官になるかどうかを決めるのは船員本人で、強制できない」と強調。予備自衛官になるよう船員が強いられるおそれについては「会社側の問題で、省としては関知しない」としている。装備政策課は「有事で民間船員の予備自衛官が乗り組めば、操船技術は格段に安定する。船を操れる者と、自衛官の感覚を持つ自衛隊OBの双方が乗るのが好ましい」としている。

 防衛省の2隻借り上げに協力する船会社2社は、取材に応じていない。

 ◇「事実上の徴用」

 全国の船員で構成する全日本海員組合の元関西地方支部長で、船員の歴史に詳しい新古勝さん(70)は、「予備自衛官になれと会社に言われたら、船員はたやすく断れない。事実上の徴用であり、太平洋戦争の悲劇を繰り返しかねず、絶対に反対だ」と批判する。【平和取材班】

==============

 ■ことば

 ◇予備自衛官

 普段は別の職業に従事し、有事の時に招集される志願制の自衛官。非常勤特別職国家公務員。かつては自衛隊での勤務経験が予備自衛官になる条件だったが、政府は2002年、医師や自動車整備士など各種の技能を持つ民間人を、10日間の教育訓練などで予備自衛官にできる制度を導入した。新制度の対象は陸上自衛隊に限られており、今後は海上自衛隊も利用できるようルール改正を検討する構え。
    --「防衛省:有事の隊員輸送、民間船員も戦地に 予備自衛官として、検討 フェリー2隻借り上げ」、『毎日新聞』2014年08月03日(日)付。

-----

[http://mainichi.jp/shimen/news/20140803ddm001010154000c.html:title]


-----

防衛省:民間船で有事輸送 戦地へ誰が行くのか 船長「何も聞いてない」
毎日新聞 2014年08月03日 東京朝刊

 「そんな話は全然聞いていない」。民間船員を予備自衛官とし、有事の際に自衛隊員を輸送させる防衛省内の論議を巡り、同省のフェリー借り上げに協力した船会社の現役船長の一人が、取材に戸惑いを口にした。戦地まで自衛隊員を運ぶ可能性について「考えたこともなかった。乗りたがる人間などいない」と話した。【平和取材班】

 この船長は50代で、船員として20年以上の経験がある。現在定期航路で働き、常に乗客の安全第一を心掛けてきた。自らが危険な場所に行くことなど想像外で、会社からの説明もないという。

 船長は「南西諸島なんて誰も行かない」と強調。会社から有事運航の話があったらどうするかとの問いにはしばらく黙り込み、「そうなったら考えるしかない。ただ、これまで何も説明がない」と話した。

 防衛省に船を貸した新日本海フェリー(入谷泰生社長、大阪市、社員約450人)と津軽海峡フェリー(石丸周象社長、北海道函館市、社員約360人)は、いずれも取材に応じていない。新日本海フェリーは、舞鶴(京都府)など本州日本海側の主要港と北海道の小樽などの間でカーフェリーを運航する。津軽海峡フェリーは、函館と青森・大間(青森県大間町)間の2航路を運航。「ナッチャンWorld」号は、2011年の東日本大震災で自衛隊員や支援物資を被災地へ運び、同年の大規模演習では戦車4両と装甲車10両、隊員約230人を北海道から大分まで運んだ。

    ◇

 戦争と平和を考える連載「平和のとなりで」を4日から始めます。

 ◇戦時中、徴用2500隻沈没 船員6万人死亡 生還者「まず民間人が犠牲」

 戦時中の船員の徴用では、悲惨な歴史がある。公益財団法人「日本殉職船員顕彰会」などによると、日本は太平洋戦争前は世界第3位の海運国だった。開戦後に民間商船や船員の大半が徴用され、米潜水艦などに攻撃された結果、約2500隻を失い、6万人以上の船員が犠牲となった。船員の死亡率は推計43%とされ海軍の兵士の2倍以上に達した。年齢制限のある徴兵と異なり、14、15歳で徴用された少年船員もおり、17歳以下の死者は1万人程度とされる。

 「戦地で死ぬと思っていた。戦争では船員などの民間人がまず犠牲になる」。横浜市西区の久我吉男さん(88)は太平洋戦争中、乗り組んでいた商船が沈められ、奇跡的に生還した体験を語った。

 16歳の時、「船員募集」の広告を見て海員養成所に入所。半年後に商船の甲板員として徴用され、南方で働くことになった。1944年9月、18歳でボーキサイトを積んだ商船に乗り組み、日本に向けてフィリピンを出航した。5隻の護衛の艦船に守られていたが、港を出た翌朝、米軍機の攻撃で沈没した。救命イカダで漂流中に、砂浜が見えた。泳いで向かったが、幻覚だった。そのまま気を失い、沈没から4日目にフィリピン人漁師に助けられた。

 一緒に乗船した30人のうち、助かったのは15人。負傷した自分以外は再び商船で日本に向かったが、その船も撃沈され、全員が亡くなった。

 1人帰国を果たし、待っていたのは徴兵検査だった。「今度は軍人か」。入隊直前に戦争が終わった。「1人で海を漂い、どれほど怖かったか。国は守ってくれない。民間人を巻き込む戦争の恐ろしさを、忘れてはならない」
    --「防衛省:民間船で有事輸送 戦地へ誰が行くのか 船長「何も聞いてない」」、『毎日新聞』2014年08月03日(日)付。

-----

[http://mainichi.jp/shimen/news/20140803ddm041010074000c.html:title]


-----

民間船:戦時中、徴用2500隻沈没 船員6万人死亡
毎日新聞 2014年08月03日

 戦時中の船員の徴用では、悲惨な歴史がある。公益財団法人「日本殉職船員顕彰会」などによると、日本は太平洋戦争前は世界第3位の海運国だった。開戦後に民間商船や船員の大半が徴用され、米潜水艦などに攻撃された結果、約2500隻を失い、6万人以上の船員が犠牲となった。船員の死亡率は推計43%とされ海軍の兵士の2倍以上に達した。年齢制限のある徴兵と異なり、14、15歳で徴用された少年船員もおり、17歳以下の死者は1万人程度とされる。

 「戦地で死ぬと思っていた。戦争では船員などの民間人がまず犠牲になる」。横浜市西区の久我吉男さん(88)は太平洋戦争中、乗り組んでいた商船が沈められ、奇跡的に生還した体験を語った。

 16歳の時、「船員募集」の広告を見て海員養成所に入所。半年後に商船の甲板員として徴用され、南方で働くことになった。1944年9月、18歳でボーキサイトを積んだ商船に乗り組み、日本に向けてフィリピンを出航した。5隻の護衛の艦船に守られていたが、港を出た翌朝、米軍機の攻撃で沈没した。救命イカダで漂流中に、砂浜が見えた。泳いで向かったが、幻覚だった。そのまま気を失い、沈没から4日目にフィリピン人漁師に助けられた。

 一緒に乗船した30人のうち、助かったのは15人。負傷した自分以外は再び商船で日本に向かったが、その船も撃沈され、全員が亡くなった。

 1人帰国を果たし、待っていたのは徴兵検査だった。「今度は軍人か」。入隊直前に戦争が終わった。「1人で海を漂い、どれほど怖かったか。国は守ってくれない。民間人を巻き込む戦争の恐ろしさを、忘れてはならない」
    --「民間船:戦時中、徴用2500隻沈没 船員6万人死亡」、『毎日新聞』2014年08月03日(日)付。

-----

[http://mainichi.jp/select/news/20140803k0000e040098000c.html:title]


20140803_sun

20140803_sun_2
20140803_sun_3
Resize1784

|

« 吉野作造研究:抵抗としてのアジア主義:吉野作造の場合 | トップページ | 書評:ベネディクト・アンダーソン(加藤剛訳)『ヤシガラ椀の外へ』NTT出版、2009年。 »

覚え書」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/451663/57026421

この記事へのトラックバック一覧です: 覚え書:「防衛省:有事の隊員輸送、民間船員も戦地に 予備自衛官として、検討 フェリー2隻借り上げ」、『毎日新聞』2014年08月03日(日)付。:

« 吉野作造研究:抵抗としてのアジア主義:吉野作造の場合 | トップページ | 書評:ベネディクト・アンダーソン(加藤剛訳)『ヤシガラ椀の外へ』NTT出版、2009年。 »