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覚え書:「くらしの明日 私の社会保障論 年功序列が崩れない理由」、『毎日新聞』2014年09月24日(木)付。


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くらしの明日
私の社会保障論
年功序列が崩れない理由
日本語の敬称と関係
山田昌弘 中央大教授


 日本の職場では、新卒一括採用や年功序列慣行がなかなか崩れない。その結果、学生は新卒でできるだけ条件のよい企業に就職しようと、就職活動に時間を取られる。そして、就職に失敗して正社員になれないと、なかなか取り返しがつかない。第二新卒や公務員採用といっても、せいぜい、卒業後の2、3年が限度。就職できなかったり、一旦辞めたりしてしまうと、正社員としての就職が大変難しくなる。その一つの理由が、日本語の「敬称」や「敬語」にあるかもしれないと思っている。
 講義でこの話をしたら、ある学生に、大学のサークルも同じだと指摘された。サークルに入ることができるのは新入生の時だけで、それを逃したり辞めたりすると、もうサークルには入りにくくなり、居場所がなくなると言う。説くに男性間では、敬称と敬語で「上下関係」をはっきりさせることが求められる。地位が上の者に対しては「さん」をつけ、「君」づけや呼び捨てが許されるのは同等か下の者に対してだけ。2年でサークルに入ると、1年の新加入者には「さん」づけされて親しくなれず、同学年のサークルの先輩たちの仲間にも入りにくい。
 大学のサークルの問題なら、卒業まで我慢すればよい。だが、仕事となれば一生の問題となる。特に、日本では多くの男性が、仕事と人格を切り離せない。仕事にプライドをもっていると言えば聞こえはいいが、プライドを傷つけられることに対して強い反発を感じる。仕事上の上下関係が、人格上の上下関係と考える人がまだ多い。
 全体としては崩れているかもしれないが、日本の企業や公務員の社会で、局所的に「年功序列」が守られているのはそのせいである。今まで、おれおまえで呼んでいた関係が、一方が昇進し、一方が敬語を使う関係になると、ぎくしゃくする。だから、同学歴なら年下の上司や年上の部下がなるべくいないように各職場で配置する。このため、ある程度の年齢で新入社員として入社することが難しくなり、新卒一括採用から漏れた人の行き場が狭まるのである。
 欧米などの海外では、そのような問題は起こりにくい。英語や中国語などには丁寧な表現はあっても、身分的な上下関係を表すための敬語はない。職場において、親しくなれば名前を呼び、それほどでもなければ敬称をつける。さらに、職場は職場、人格は人格と割り切る人が多いから、年齢にこだわらない採用や昇進が行われる。
 多様な人材の活用が求められている次代には、年齢による上下関係を維持する仕組みは、むしろ企業発展の障害になっているのではないだろうか。日本でも、呼び方の改革を考える必要があるかもしれない。
新卒一括採用 企業は毎年度、在学中の学生を対象に一括して求人を行い、採用する仕組み。新卒時に就職できないと、その後も正社員になるのが難しいことや、在学中の就職活動が学業に悪影響をもたらすなど負の面も指摘され、見直しを求める声も大きい。
    --「くらしの明日 私の社会保障論 年功序列が崩れない理由=山田昌弘」、『毎日新聞』2014年09月24日(木)付。

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