拙文:「読書 宗教とグローバル市民社会 ロバート・N・ベラー、島薗進、奥村隆編・岩波書店」、『聖教新聞』2014年09月27日(土)付。
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読書
宗教とグローバル市民社会
ロバート・N・ベラー、島薗進、奥村隆編
偏狭な国家主義への憂慮
一昨年秋、宗教社会学の巨人ロバート・ベラーは85歳の恒例にもかかわらず来日し、立教大学などで精力的に講演した。本書は、その公園・シンポジウムの内容、招聘者の論考を収めた記録だ。
テーマは、グローバル市民社会における市民宗教の可能性、「人類進化における宗教」に関する考察、政治思想家・丸山眞男の比較ファシズム論を通した現代日本への警鐘と幅広い。人生を振り返りつつ、未来を洞察するベラーの思索の総決算ともいうべき貴重な対話の数々である。
弱肉強食を自明視する新自由主義が世界を席巻する中、その是正が政治的課題として取り上げられる。とすれば、それは同時に、抗う側の宗教の課題であろうとベラーは指摘する。グローバルな連帯には宗教的な動機が必要だからだ。
注目すべきは丸山ファシズム論をめぐるベラーの評価であろう。自己中心的な関心を超え、他者へ向かう宗教的意識は民主主義につながると論ずる一方、排外主義と歴史修正主義に傾きがちな現代日本に警鐘を鳴らす。
序文の中で「日本のナショナリズムの復活を、とくに深く憂慮する」と記した後、ベラーは急逝した。その言葉を真摯に受け止めたい。(氏)
●岩波書店・3024円
--「読書 宗教とグローバル市民社会 ロバート・N・ベラー、島薗進、奥村隆編・岩波書店」、『聖教新聞』2014年09月27日(土)付。
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