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覚え書:「インタビュー:『JK産業』と少女たち 居場所のない女子高生を支援する仁藤夢乃さん」、『朝日新聞』2014年11月06日(木)付。


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インタビュー:「JK産業」と少女たち 居場所のない女子高生を支援する仁藤夢乃さん
2014年11月6日

(写真キャプション)「女の子たちには『あきらめないで。自分の可能性を信じて』と言い続けていきたい」=西田裕樹撮影

 「JK(女子高生)」を売りにする「JKリフレ」や「JKお散歩」といった店がここ2年ほどで急に広がっている。性被害に遭う危険があり、買春や犯罪の温床になるような場に、なぜ女子高生たちは足を踏み入れるのだろうか。自らの高校時代を重ねながら彼女らの思いを受け止め、支援する仁藤夢乃さんに聞いた。

 ――ご自身はどんな高校生だったのでしょう。

 「月に25日渋谷で過ごしていました。両親はけんかばかり、母ともぶつかって家にいたくなかった。夕方から渋谷に出て夜遅くまでたむろしていました。酒もたばこもやった。始発で帰ることもあったし、ビルの屋上に段ボールを敷いて寝たこともあります。絶望感しかなかった。やりたいことも夢もなく、だれも理解してくれないと思っていた。私が支援する女子高生も同じですが、居場所がなかった。『死にたい』といつも思っていました」

 「街で声をかけてくる大人は、援助交際目的の買春男か、店で働かないかと誘ってくるスカウト。世の中には、価値観を押しつける先生や親か、女子高生の若さと体を利用しようとするおじさんしかいないのかと思っていた。『5千円あげるから、つば売って』と紙コップを突き出す男もいた。友人がつばを吐くと、男はサイダーを注いで飲みました」

 ――何がきっかけで、そうした生活が変わるのですか。

 「両親が離婚し、2年で高校を中退しました。その後、祖母にお金を出してもらって、高校卒業程度認定試験の勉強のために新宿の予備校に通いました。何カ月かたって、毎週土曜に農作業をする『農園ゼミ』に誘われました。土曜の渋谷は人が多すぎるし、母がいる家にはいたくない。実際に農作業をする気はなかったけど、ごはんも出るというし、ミニスカートにハイヒールで行きました。そこで阿蘇敏文さんという講師に出会いました」

 「阿蘇さんは4年前に69歳で亡くなりましたが、牧師で、日本人の父親に遺棄された日比国際児を支援するなどさまざまな活動をしていた人です。ミニスカート姿の私を『よく来たね。でも寒くないのか、そんなスカートで。パンツ見えちゃうぞ』なんて言って迎えてくれました。農園には、難民を支援する人とか夜間中学にかかわる人とかいろんな人が来ていて、そこでの何げない会話の積み重ねから、自分が知らない世界の大人がいることを知ります。体目的じゃない、私を利用しようとしない大人が、そこにはいた。阿蘇さんは私を、『私』として見てくれた初めての大人でした」

 「阿蘇さんとフィリピンに行き、スラム街などを訪れました。すべてが衝撃でした。歓楽街に『YUME NO HOUSE』という私の名前と同じ店があったので見ていると、10代の女の子が日本語を一生懸命覚えて、日本人男性相手にたった数千円でホテルに行っている。『渋谷と同じじゃん。なぜ、ここでも起こっているの?』と。生活に困っている女の子はほかに選択肢がないのだろうかと思って勉強してみたくなり、大学に進学しました。阿蘇さんに会わなければ、私は性を売る仕事をしていたでしょうね」

     ■     ■

 ――どうやって女子高生を支援しているのですか。

 「大学時代は国際協力のサークルに入ったり、東日本大震災の被災地の高校生と協力してお菓子を開発したりしましたが、2年ほど前にJK産業が広がっていることに気づきました。私自身、メードカフェでアルバイトをしたことがありますが、当時は何かしら事情を抱えた『ワケあり』の子ばかりでした。それがここ2年、経済的にも家庭や学校との関係性でも困っていない『ふつう』の子が増えていました」

 「以前は裏社会につながるグレーな存在だったメードが表社会に認められる存在になったためです。裏でこっそりやられていた『リフレ』や『お散歩』もいまでは堂々と表で行われている。最初はアルバイト感覚でリフレやお散歩をしても、そのうち感覚がまひしていって、水商売や風俗に進んでいきます。たくさんのふつうの女の子がJK産業で働いていることに危機感を覚え、街に出て女の子たちの話を聞き始めました。いまは50人ぐらいの女の子たちの相談にのっています」

 「ただ話を聞いて、たまに食事を一緒にして、何かあったら相談するようにと伝えます。内容によっては『やっていることは売春』『危険だよ』とも言います。強姦(ごうかん)されてもどうしていいかわからない女の子は少なくない。『助けて』という声もあげられない子が多いんです。一方で、ちょっと声をかけるとすぐにLINE(ライン)を交換してくれ、『お姉ちゃん』と慕ってくる。うれしいけど、あまりにも無防備で切ない。そういうところに裏社会の人たちがつけ込んできます」

 ――どういうふうに?

 「スカウトがやさしく声をかけて誘い、店長は彼女たちの居場所をつくり、相談にのったり励ましたりする。待機時間に勉強まで教えているところもあります。女子高生が“商品”だからなんですが、彼女たちは店長に信頼を寄せてしまう。たとえば店長が路上で客引きをしている女の子に『大丈夫?』などと言いながらジュースを渡す。本当は監視のための見回りなのに、守ってもらっていると思ってしまうのです」

 「オーナーも顔を見せて『がんばっているね』などと声をかける。辞めそうな子には、スカウトが『元気ないけど何かあった?』などと電話を入れ、『私のことをわかってくれている』と思わせ、系列の別の店を紹介してそこで働くように仕向けます。泊まるところのない子が身を寄せるシェアハウスもある。彼らは彼女たちに『衣食住』と『関係性』を提供し、JK産業、水商売、風俗へと導いていきます。学校や行政は、少女のタイプに合わせて巧みに対応するスカウト―店長―オーナーという体制に負けています」

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 ――渋谷や新宿の夜の街を見てもらうツアーをしていますね。

 「彼女たちを理解し、向き合ってくれる人を増やしたいからです。かつての私がそうだったように、『わかってくれる大人はいない』と思っているし、困ったときに話ができる人もいない。『何かあったら絶対連絡して』と私は言っていますが、あらゆる大人が女の子たちにそう言ってほしいのです」

 ――大人の知らない世界がたくさんあります。

 「出会い系のカフェや居酒屋があることをご存じですか。女の子は無料です。だから、ごはんを食べるために行く。男の人は女の子に出会うために行きます。その後どうなるかは想像できますよね」

 「登録されている知らない人と無料でテレビ電話がつながるアプリもあります。局部を丸出しにした男が出てくることも多い。たまにはいい人風に見える人もいて、『ここで出会えた。LINEを交換しよう』と言われると、女の子は対応してしまう。こんなアプリを利用する大人は怪しいのですが、そこまで頭が回りません。連絡をとるうちにディズニーランドのチケットが余っていると誘われ、『ラッキー!』と出かける。抱きしめられて『帰したくない』などと言われて……。実際に16歳の女子と40歳の男性との間に起こったことです」

 「スマホがこれだけ普及すると、友だち探しのアプリやネットを使って知らない人と会うというのは子どもにとってふつうの感覚。その現実を踏まえ、学校、特に義務教育で危険性を教えていかなくてはいけない。危険の入り口へのハードルはどんどん低くなっているのに、大人はついていっていません」

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 ――大人は少女たちのために何ができるのでしょうか。

 「女の子たちの居場所づくりが必要です。いま私が考えているのは、相談を受ける態勢を整え、一食ケアつきの仮眠スペースを設けることです。この前、九州の女の子から『私は18歳。死のうと思っていた。でも、夢乃さんが私たちの居場所づくりをしていると知った。私も地元でそういう場所をつくりたい』と連絡がありました。そんな思いがある子はいまもたくさんいる。5年もたてば私は“おばちゃん”。だから、後輩の若い仲間を増やして、女の子たちの支援を続けていきたい」

 「援交おじさんは、女の子たちから『ウザい』『キモい』『汗臭い』と言われてもめげずにアプローチを続ける。私たち大人は、それぐらい本気で彼女たちにかかわっていかないと支援できません」

 (聞き手 編集委員・大久保真紀)

    *

 にとうゆめの 89年生まれ。明治学院大在学中に女子高校生サポートセンター「Colabo」を立ち上げ、卒業時に法人化。著書に「難民高校生」など。

 ◆キーワード

 <JK(女子高生)産業> 客が金を払い、制服姿の女子高生に体を触ってもらったりデートしたりする商売。個室サービスの「リフレ」(リフレクソロジーの略)について、警視庁は13年、労働基準法違反容疑で経営者らを逮捕。その後「お散歩」「撮影会」が広がった。14年版の米国務省人身売買報告書は「JKお散歩」を性目的の人身売買の形態の一つとして批判している。 
    --「インタビュー:『JK産業』と少女たち 居場所のない女子高生を支援する仁藤夢乃さん」、『朝日新聞』2014年11月06日(木)付。

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