拙文:「読書:井上順孝編『21世紀の宗教研究』平凡社 刺激に富む先端科学との邂逅」、『聖教新聞』2014年11月22日(土)付。
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読書
21世紀の宗教研究
井上順孝編
刺激に富む先端科学との邂逅
「科学的」という評価が合理的な価値あるものと見なされる現代。その対極に位置するのが宗教だ。宗教を迷信と捉えず、「宗教とは何か」を科学的に探究するのが宗教学の出発だったが、学の展開は飽くなき細分化を招き、原点と隔たってしまったのが現状だ。先端科学の知見と宗教学の接点を切り結ぶ本論集は、再び根本に問いに立ち返る刺激に満ちた一冊だ。
井上順孝の論考「宗教研究の新しいフォーメーション」は、現代の宗教研究が向き合うべき諸学との交渉を俯瞰する総論といえる。著者は科学の新しいアプローチの需要に積極的だ。M・ヴィツェルの「神話の『アフリカ』」は、遺伝子研究と進化論をたよりに、言語以前にさかのぼり神話を大胆に比較検討する。
長谷川眞理子の「進化生物学から見た宗教的概念の心的基盤」には瞠目する。宗教減少を「宗教的概念を使った思考」と捉え、例えば「世の中の悲惨に対して慰めを提供すること」が、生物学・脳科学的な進化の結果だと素描する。
信仰をもつ「人間」は、動物でありながら他の動物と異なる。その両義性に注目するのが芦名定道の「脳神経科学と宗教研究ネットワークの行方」だ。物質(脳)と非物質(心)の関わりを解き明かす知見は、宗教研究の新しい可能性となろう。
歴史的に、宗教学と自然科学の相性は良いとはいえなかった。しかし、科学自体、人間を探究する営みでえある以上、両者の邂逅は、従来の認識を一新する。(氏)
○平凡社・2592円
--「読書:井上順孝編『21世紀の宗教研究』平凡社 刺激に富む先端科学との邂逅」、『聖教新聞』2014年11月22日(土)付。
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平凡社
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