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覚え書:「『大義』の陰で:2014衆院選/6 首相、訓示で殉職言及 安保論議の先に『戦死』」、『毎日新聞』2014年11月26日(水)付。


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「大義」の陰で:2014衆院選/6 首相、訓示で殉職言及 安保論議の先に「戦死」
毎日新聞 2014年11月26日 東京朝刊

(写真キャプション)昨年までの防大首相訓示で引用された言葉など

 創設以来戦死者ゼロの自衛隊だが、殉職者は1851人を数える。その死を弔う「メモリアルゾーン」が東京・市ケ谷の防衛省内にあり、「殉職者慰霊碑」が建っている。

 今年3月22日、防衛大卒業式で安倍晋三首相の行った訓示が関係者の関心を呼んだ。

 「自衛官人生のすべてを懸けて、最後の瞬間まで国民の命を守ろうとした」。前段で、1999年11月に埼玉県で起きた自衛隊機墜落事故の殉職者2人をたたえた。

 事故は機器の故障が原因とされ、操縦士2人は市街地への墜落を避けるために操縦かんを放さず、脱出が遅れたとみられる。だが、高圧送電線を切断して大規模停電が起き、自衛隊は批判を浴びた。

 殉職者に触れる訓示は異例だが、中段でさらに熱を帯びた。

 「困難な任務に就く諸君は、万が一の事態に直面するかもしれない」「南西の海では主権に対する挑発も相次いでいる」「日本近海の公海上で、警戒にあたる米国のイージス艦が攻撃されるかもしれない。その時に、日本は何もできないということでよいのか」

 訓示はそのまま、7月の集団的自衛権(緊密な関係にある他国を攻撃した敵に反撃する権利)の行使容認に帰結した。世論の賛否が渦巻く中での閣議決定から5カ月。秋の臨時国会の議論は低調で、問題はアベノミクスのワンフレーズ選挙の中で埋没しかねない。

 ◇「時代変わった」「なぜ乃木引用」
 「これまで型通りの内容ばかりだった。こんな最高指揮官(首相)は初めてだ」。航空自衛隊幹部の一人は訓示に感激した。例年は旧軍の反省に立った初代防大校長などの言葉を引くが、安倍氏は殉職者の氏名も挙げた。「批判を受けた無念が晴れた。時代が変わった」と感慨深げだ。

 だが、陸上自衛隊幹部の一人は別の感想を抱いた。安倍氏は訓示の後段で、幹部自衛官が任務にあたる覚悟として、明治の陸軍大将、乃木希典(まれすけ)の言葉を引いた。「唯至誠(ただしせい)を以(もっ)て御奉公申上ぐる一事(いちじ)に至りては人後に落ちまい」(ひたすら誠の気持ちで尽くすことでは誰にも負けない)

 日露戦争の司令官だった乃木は明治天皇の死去に際し割腹して殉死を遂げ、軍人精神の体現者として軍神となった。引用は、乃木が皇族や華族の学ぶ学習院のトップに就いた際、「軍人に教育ができるか」という周囲の批判への反論だった。 

 作家の司馬遼太郎は戦後、旅順攻略で多数の戦死者を出した乃木を愚将として描いた。「防大は旧軍の精神主義を反省して創設された。当時、他に立派な軍人はいた」と陸自幹部は困惑する。「幅広い国民の理解が必要な時に、なぜ乃木か」

 実家が山口県の安倍氏は、長州人の乃木に親近感を抱く。野党時代にエッセーで「乃木は愚将だったのか」と問いかけ、司馬に事実誤認があるとする作家らの分析を交えて同郷人を擁護した(月刊文芸春秋2010年12月臨時増刊号)。

 ◇集団的自衛権は来春議論本格化
 自衛隊で「戦死者」が出た際どう対応するか、政府の方針は明確に定まっていない。

 メモリアルゾーンの整備にかかわった守屋武昌・元防衛事務次官は、イラクに派遣された自衛官から帰国後自殺者が相次いだ点を踏まえ、戦死を含む殉職を特別に扱う立法措置が必要だと訴える。イラク派遣前、当時の陸上幕僚長が防衛庁長官に「殉職の制度が整わないうちは部隊を出せない」と訴えた場面を記憶する。だが、議論は進んでいない。

 「遺族は何も主張しない。だからこそ集団的自衛権の賛否を超えて周囲が考えてほしい」と守屋氏は言う。政府が来春以降予定する集団的自衛権関連法制の議論の先には、「戦死」を巡る議論が待っている。【本多健】=つづく
    --「『大義』の陰で:2014衆院選/6 首相、訓示で殉職言及 安保論議の先に『戦死』」、『毎日新聞』2014年11月26日(水)付。

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