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覚え書:「波聞風問:『21世紀の資本』論 格差への処方箋、どうつくる 吉岡桂子」、『朝日新聞』2014年11月30日(日)付。


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波聞風問:「21世紀の資本」論 格差への処方箋、どうつくる 吉岡桂子
2014年11月30日

 波聞風問(はもんふうもん)

 アジア太平洋経済協力会議(APEC)に出席する首脳たちが北京に集まっていた11月11日。「明星(スター)」経済学者がパリから上海にやってきた。

 托馬斯・皮凱蒂。パリ経済学校教授のトマ・ピケティさん(43)だ。

 格差の変化や所得の分配と経済成長について、18世紀にまでさかのぼる詳細なデータを駆使して論じた著書「21世紀の資本」は米国から火がつき、ドイツ、韓国などで翻訳版が出て話題を呼んでいる。

 中国語版も9月に発売された。700ページ近い大著の売り上げが20万部に迫る勢いだという。中国は深刻な格差を抱えるうえ、「米国流資本主義の限界を突いた」(大学院生)内容にみえる点も、人気の背景にあるようだ。

 北京を含めた6日間の滞在中、ひっぱりだこだった。空港に着くなり、書店へかけつけサイン会や写真撮影。「講演10回、会見2回、インタビュー10回」(中国誌『南方人物週刊』)。彼の高校生の娘が中国語を学んでいるエピソードも歓迎されている。

 習近平(シーチンピン)国家主席の母校、北京の清華大での講演をのぞいた。学生ら数百人が講堂を埋めている。ノータイ姿のピケティさんは、先進国のデータを中心に自著の要約を説明し、中国の研究者と討論し、学生から質問をうけた。

 「中国はデータが不足していて、分析が難しい」。そうこぼしつつも、中国の格差縮小の処方箋(せん)として、高所得者ほど高い税率を課す累進課税の強化や、不動産や遺産など財産への課税を説いた。

 これに対して、「高い税率は働く気をなくすのではないか」と問いかける学生も。いっぽう、中国の研究者からは、格差を再生産する構造の根深さへの嘆きともとれる指摘が続いた。出稼ぎ労働者の子供の教育への差別、公務員の腐敗による政府のお金の流失やわいろ……。

 「不動産を含めて個人資産への課税は、中国には基本的にない。反対がとても強い」と白重恩・清華大教授は言う。「ビジネスを円滑に進めるにも公務員の助けがいる」とも。政府との距離が富の蓄積に直結する社会なのだ。

 「社会主義」のもと、資産階級がいない前提で財産税がないなかで、特権をてこに財産を積み上げる人がいる——。中国で格差を拡大させる「21世紀の矛盾」の解は、経済学より政治学の範疇(はんちゅう)なのかもしれない。「政治の民主は必ずや経済の民主とともにやってくる」。ピケティさんは中国語版の序文に、意味深な一文を寄せている。

 日本語版は選挙戦のさなか12月上旬に売り出される。それぞれの「不平等」を映す世界のベストセラーは、日本ではいま、どんな読まれ方をするのだろうか。(よしおかけいこ 編集委員)
    ーー「波聞風問:『21世紀の資本』論 格差への処方箋、どうつくる 吉岡桂子」、『朝日新聞』2014年11月30日(日)付。

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[http://www.asahi.com/articles/DA3S11482729.html:title]

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