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覚え書:「くらしの明日 私の社会保障論 課題解決は体で学ぶ=湯浅誠」、『毎日新聞』2015年02月04日(水)付。


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くらしの明日
私の社会保障論
課題解決は体で学ぶ
「問題抱えた子」が育てる「ふつうの子」

 小さい頃、よく草野球をやった。障害をもつ兄は、当時はまだ補装具を着ければ立てていた。だが走ることはできない。私が兄の後ろに控え、兄が打ったら私が走った。バットスイングもおぼつかなかったので、ピッチャーは3歩ほど前へ出て、下手投げで投げた。
 勝負!という張りつめた感じはなかったが、はれ物に触るという雰囲気でもなかった。その場に兄がいる現実を踏まえて、それでも楽しむためにはどうするか。ほどほどに塁に出られて、ほどほどにアウトにできる「ふつうの状態」を作るために、みんながルールを調整した。
 思えば、今はやりの「課題解決型の主体的学習(アクティブ・ラーニング)」の実践だった。
 それは、先生が答えを隠し持っていながら「さあみんなで考えてみよう!」と課題を提示するのとは違って、リアルだった。答えなどなかったし、できあがった状態が結果として答えになっていただけだった。
 大人になって、「五体不満足」が大ヒットした乙武洋匡さんからも同じ話を聞いた。ドッジボールのとき彼がボールを持つと、みんなが3メートル以内に寄っていくというルールができたそうだ。あの感じだ、と一瞬で理解できた。子どもたちは状況に応じ、最適化していく課題解決力を元々持ち合わせている。
 そして幸いなことに、小さい頃の私の周りには「子どもたちが負担させられてかわいそう」と言い出す大人がいなかった。おかげで私たちは、課題解決を学ぶことができた。誰かが兄を連れ去ってしまったら、既存のルールを疑い、現状に応じて最適化していくという体験も一緒に連れ去られてしまっただろう。私は、ルールを墨守するだけの、つまらない人間になっていたかもしれない。
 「みんなの学校」という映画の上映が始まる。舞台は大阪の市立大空小学校。そこではたくさんの「問題を抱えた子」が「ふつうの子」たちと同じクラスで学んでいる。試写会で映画を見て、私はその子たちに「よかったね」と言いたくなった。「問題を抱えた子」にではなく「ふつうの子」たちにだ。だってその子たちは、これからますます必要とされる、課題解決型の主体的学習ができている。科目ではなく学校生活のすべてを通じて、頭ではなく体で。そんな学校に通えて、ラッキーだ。
 将来、その子たちはルールにただ従うだけでなく、ルールを人に合わせられる人間本位の大人になるだろう。そんな力をどこで身につけたのかと聞かれても、本人は「あたりまえだろう」としか答えられないかもしれないが。生きた智恵を体得するとは、そういうことだから。
課題解決型学習 児童・生徒が自ら課題を見つけ、互いに意見を出し合いながら教員も交えて解決策を探る授業法。思考力や表現力、協働性の育成に効果的とされ、小中高校の次期学習指導要領では、充実策が盛り込まれる。授業法は確立されておらず、一部の学校で取り組まれているのが現状。
    --「くらしの明日 私の社会保障論 課題解決は体で学ぶ=湯浅誠」、『毎日新聞』2015年02月04日(水)付。

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コメント

Im thankful for the article post. Want more.
Owen http://jimichello.soup.io/post/518280023/Symptoms-Of-Hammertoe

投稿: Owen | 2015年2月15日 (日) 08時43分

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