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覚え書:「NHK籾井会長の発言『放送法に反する』 早大・上村氏」、『朝日新聞』2015年03月03日(火)付。


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NHK籾井会長の発言「放送法に反する」 早大・上村氏
聞き手・中島耕太郎2015年03月03日

(写真キャプション)「NHKの独立は、強いものに対して発揮されるべき」と語る上村達男・早大教授=麻生健撮影

 NHKの経営委員会で委員長代行を務めてきた上村(うえむら)達男・早稲田大教授(会社法・資本市場法)が3年の任期を終え、2月末で退任した。経営委は会長を任免し、監督する立場にある。籾井勝人会長の言動や資質を在職中から批判してきた上村氏に、問題点と課題を聞いた。

 ――籾井会長の発言が繰り返し問題視されています。

 放送法はNHKの独立や政治的中立を定めています。しかし、就任会見時の「政府が右と言うことに対して左とは言えない」とか、従軍慰安婦問題について「正式に政府のスタンスがまだ見えない」といった最近の籾井会長の発言は、政府の姿勢におもねるもので、放送法に反します。放送法に反する見解を持った人物が会長を務めているということです。

 会長は「それは個人的見解だ」と言って、まだ訂正もしていませんが、放送法に反する意見が個人的見解というのは、会長の資格要件に反していると思います。

 お笑い番組でも「品のないものはやめた方がいい」という趣旨の発言をしています。私も番組に一定の品性は必要だと思いますが、会長がそれを言うことには違和感があります。NHKにはそうしたことも含めて判断するシステムがありますので。

 ――籾井会長を満場一致で選んだのは、上村代行を含む12人の経営委員です。

 確かに経営委に責任があります。ただ、籾井氏の経歴を見ると、一流商社である三井物産で副社長まで務め、海外経験も豊富な人物。数人の候補者がおり、籾井氏には異論が出なかった。20~30分の面接では、信条の問題まではわからない。「放送法を守ります」と繰り返していましたし。時間をかけて以前より数段良い(会長の)選任規定を作ったと思っていますが、経営委員が誰を推薦するかは手続きでは縛れない。最終候補者を2人にして面談することも考えられるが、大企業のトップ級と比べて低い報酬(年間約3千万円)では、「面談を受けてまで引き受けたくない」ということにならないか。

 ――市民団体などには「経営委は籾井会長を罷免(ひめん)すべきだ」という声もあります。

 経営委の過半数が賛成すれば会長を罷免できます。少なくとも籾井会長を立派な会長だと思っている委員はほぼいないのではないか。ただ、就任会見直後ならともかく、今は罷免までしなくても事態を切り抜けられると考えている委員の方が多いとみています。

 私はずっと罷免すべきだと思っていた。ただ、罷免の動議をかけて、否決されると、籾井会長は「信任された」と思うでしょう。それでは逆効果になると考えました。

 ――経営委員が政権の意向を忖度(そんたく)していることはありませんか。経営委員を首相が任命する仕組みが問題では?

 忖度している委員がいるかどうかは臆測になるので控えますが、そうした懸念があるために、任命に国会の同意が必要になっている。政権が代わるごとに体制や運営方針が変わるのは良くない。この点に懸念が生ずる運用が定着するようだったら、国会の3分の2とか4分の3以上の賛成を要するといった制度改革も必要になると思います。私の交代に伴う人事はある程度自制的になっているようにも見えますが。少なくとも与党に近い人を推薦するのは当然という問題ではないのです。

 ――NHK会長が担う権限をどのように考えますか。

 NHKは非常に公共性が高いにもかかわらず、所管官庁が介入しない珍しい存在です。電力会社でも金融機関でも陰に陽に官庁から口を出される。しかし、総務省は報道機関であるNHKには干渉できない仕組みになっている。

 経営委は経営の重要事項の決議機関ですが、専門性に乏しい12人の集まり。審議機関の理事会と情報に格差がある。しかも、会長は理事会の審議結果に拘束されないと理解されてきました。関連団体や派遣社員を含めれば2万人にもなる大組織を率いる会長がチェックされない存在になりやすい。籾井会長には、びっくりするぐらい権力があることになっているんです。

 ――監査委員会の機能強化を意見して退任しました。

 監査委員会や事務局が調査権限を発揮して、会長や理事が何をしているのか、経営委に伝えなければならない。

 ――テレビ放送をインターネットで流すことが今後本格化し、受信料制度の見直しも議論されそうです。NHKの公共性について、さらに国民の理解が必要なのでは?

 NHKは本来、社会にとって重要な公共空間(コモンズ)なのです。例えばニューヨークのセントラルパークを散歩しない人でも、その価値は認めて、維持のための費用は負担するでしょう? 欧州の主要国では、受信料はテレビを見る対価という感覚を超え、公共財を市民社会が支えるという考え方がみられます。

 籾井会長が起こした最も大きな問題の一つは、NHKの予算案に、国会で与党だけが賛成するという状況を生み出したことです。視聴者には与党支持者も野党支持者もいるのだから、原則的に全会一致で承認されることに意味があった。NHKは時の政治状況に左右されてはならないのです。

 NHKは多様な見方を提供して、日本の民主主義が成熟していくように貢献しなければならない。NHKの独立というのは強いものに対して発揮されるべきもの。弱いものに対しては「独立」とは言わないわけですから。(聞き手・中島耕太郎)
    --「NHK籾井会長の発言『放送法に反する』 早大・上村氏」、『朝日新聞』2015年03月03日(火)付。

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[http://www.asahi.com/articles/ASH2V625NH2VUCVL019.html:title]


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